平成29年(2017年)5月29日から始まった法定相続情報証明制度。 現時点では被相続人の死亡に関係する相続手続(金融機関・不動産・保険・車等)及び年金手続にのみしか利用できませんが、手続きが多い方や親族関係が複雑で戸籍が多い方にはオススメです。
戸籍・住民票一式はコピーを提出しなくても手続終了後に返却してもらえますし、不備がなければ1週間くらいで一覧図の写しを交付してもらえます。手数料はなんと無料! 時期的な制限もないので、相続開始からかなり時間が経っていても作成できます。
基本的な申出方法については士業の先生方のブログにもたくさん紹介されているので、調べて活用してみてください。
今回は、なかなか珍しいケースの申出をやってみたので、シェアしたいと思います。
遺産分割後の手続きを円滑に進めるためも、事前に法定相続情報一覧図を作ってみようかというボスの指示。※架空の設定です
1 申出権者について
申出できるのは、法定相続人(代理人可)のみです。
【代理人になれる人】
・申出人の親族
・資格者(弁護士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士)
では不在者財産管理人は?というと、法定相続人(不在者)の法定代理人として申出ができます!
2 一覧図作成方法
基本的な書き方は法務局のHP掲載の記載例を参考にしてください。
【目次メモ】HP掲載順
第1順位
・配偶者および子(1人~4人まで対応)である場合
・嫡出でない子がいる場合(平成25年9月4日以前に相続が開始している場合に限る。)
・子が多数であり,法定相続情報一覧図が複数枚にわたる場合
・子(1人~4人まで対応)だけである場合
第2順位
・配偶者および親1名(父又は母)である場合
・配偶者および親2名(父及び母)である場合
第3順位
・配偶者および兄弟姉妹(1人~3人まで対応)である場合
・父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいる場合
代襲相続
・代襲相続が生じている場合(配偶者・子複数名・子について代襲相続)
・再代襲が生じ,法定相続情報一覧図が複数枚にわたる場合(配偶者・子複数名・子についての代襲者を更に代襲)
旧民法(明治31年法律第9号)下における相続
・隠居による家督相続及び死亡による遺産相続が生じている場合
・死亡による家督相続が生じている場合
養子
・法定相続人が配偶者及び子(実子2人,養子1人)である場合
その他
・列挙形式(父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹がいる場合)
・委任による代理人によって申出をする場合の委任状
!!注目!! 不在者財産管理人ならではの注意事項
不在者氏名は記載するが、住所は記載できない(「現住所」でも「最後の住所地」でもないため)
不在者氏名の横に「(申出人)」とは記載しない
作成者欄は次のように記載する
- 作成日は申出書提出日と一緒
諸事情により戸籍とってから申出まで時間あいちゃったってこと、ありますよね・・・。実際は一覧図作成したのが少し前でも、申出日に合わせるのが基本のよう。どうか、転居していませんように。
ちなみに、相続財産管理人の場合は作成者の肩書が「亡 〇〇 相続財産管理人(申出人)」になります。
★POINT★ 相続人と誤認させる記載はなるべく排除する!
できるだけ法務局HP記載の書式に合わせたほうが良さそうです。
常日頃相続関係図を作成している身としては、ついついすでにお亡くなりになっている人を載せたくなってしまいますが、「なるべく記載しないでください。」と言われてしまいました。つまり、例えばすでに配偶者や子供が死亡していたら、その人物自体記載しません。(なんだか存在を抹消してしまうようで気持ち悪かったので、(妻)や(長男)とだけ記載したものを出してみたのですが、即補正を求められました笑)
★POINT★ 数次相続人は記載できない
お亡くなりになった人ごとに法定相続情報一覧図を作成しなければならないようです。
なお住所を記載するかは自由ですが、個人的には銀行の手続きを考えると、載せておいたほうが良いのかなと思います。 また一覧図に記載する続柄を単に「子」にしてしまうと、相続税申告書の添付書類として利用できないようです。できるだけ戸籍と同じ表記を使うようにしましょう。相続放棄した人も遺産分割協議の結果相続しない人も、戸籍上は相続人なので記載します。
3 手続き方法
管轄法務局の窓口提出でも、郵送でも可能ですが、郵送がオススメ! 即日発行はしていないようで、修正なしだとしても中1~3日くらいみておいたほうが良さそうです。
【必要書類】 ※今回のケース
- 申出書
- 申出人の本人確認書類
・不在者の住民票または戸籍の附票 原本
・(原本還付希望の場合)上記コピーに「原本と相違ない」旨記載のうえ、弁護士の記名押印したもの(以下「原本証明」という)
・弁護士の運転免許証またはマイナンバーカードの表裏コピーに原本証明したもの
・不在者財産管理人選任審判書 原本
・上記コピーに原本証明したもの
・家庭裁判所発行の不在者財産管理人印鑑証明書 原本(これはもしかすると要らないかもしれません。私は念のため出しました。)
・(原本還付希望の場合)上記コピーに原本証明したもの
・(審判書記載の住所が事務所の場合)弁護士会身分証明書の表裏コピーまたは弁護士会の印鑑証明書のコピーに原本証明したもの - 被相続人の戸籍謄本等(出生から死亡までのものすべて) 原本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 原本
死亡から5年以上経っていて取得できない等準備できない場合は省略可。(なお一覧図には最後の本籍を記載しておきます。) * 相続人全員の戸籍謄本 原本 被相続人が死亡した日以降に交付を受けたものが必要です。繋がりがわかれば現在戸籍のみでOK。 * (住所を記載したい場合)相続人全員の住民票または戸籍の附表 原本 ※コピーが2枚以上にわたる場合、1枚目に原本証明すればOK。原本還付のやり方はこちら↓のブログがわかりやすかったのでシェアしておきます。
【窓口で手続きする場合】
受け取りの際は本人確認が必要なため、弁護士が「申出人の表示」欄に押印した印鑑を持参し、受け取りする必要があります。
ちなみに東京法務局本局だと取扱いは中央区と千代田区だけで、窓口はかなり分かりづらく、4階の不動産登記(表示)の窓口と一緒です。
なお申請については出すだけなので事務員が使者として提出可能だが、受け取りは制限が多いので事務員が資格者代理人の使者として認められるか疑義を抱くとのことでした。
面倒ごとを避けるためにも可能な限り郵送での申出・受け取りにしてもらいましょう。(事務員自身が資格者であれば、委任状もって復代理で単純にできると思いますが・・・。法務局は基本的には使者を認めてくれないのです。供託は別ですが。)
4 提出先
申出先は次のいずれかを自由に選択できます。
【管轄する登記所】
- 被相続人の死亡時の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
なお不在者財産管理人が申出する場合、申出人の住所地にするならば、不在者の判明している最新の住民票上の住所地を管轄する登記所になります。 管轄は不動産登記の時と同じ要領で調べましょう。
とはいえ金融機関や証券会社によっては受け付けてもらえない可能性があるなど活用範囲が限定されるので、専門家にとって作ったほうが効率的なのかは判断が分かれそうです。正直あまり法律事務所の業務で使う機会はないかなーと思いつつ。
始まったばかりの制度で、他の制度との調整のためこの先も変更点が色々あると思います。各法務局ごとに運用が異なる可能性もあるので、ある程度調べたうえで最後は管轄の法務局へ確認してください。
登記手続に利用するからなのか、不動産登記部門が兼務していることが多いようです。
例のごとく申出内容に係る専門職による疑義は照会書でないと応じてもらえません。(たまに答えてくれるありがたい担当者もいますが…)基本的に電話確認も予約制相談窓口も利用できないので、とりあえず出してみたほうが早いと思うのでトライしてみてください。マイナーなケースは相手方も不慣れなことが多く、お互い協力して処理することが大切ですよね!
では、また。