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パラリーガルの管財事件との関わり方

...これは私が転職時に採用面接を受けたときのこと。
ボス「うちの事務所はいわゆる街弁で色んな事件をやります。僕は管財や企業法務がメインではあるけど、特に専門とかはないです。経験が多い分野はあったりするけど、特化しているわけではないです。個人的に弁護士業務には専門って考え方は馴染まないと思うんだけどね。
そういえば〇〇弁護士は訴訟が多い気がするなぁ。
弁護士会の法律相談とは結構やってます。刑事も担当が回ってきたらやりますね。」
私 「・・・そうなんですね。(ええっ、カンザイってなんだ!?)」

皆さん「管財」と言われて何のことかすぐにお分かりになりますか?
財産の管理をするってこと?メイン業務?・・・はて、どういう仕事?
私は法学部の出身ですが、お恥ずかしながら管財という言葉に全くピンと来ませんでした笑。
それもそのはず。私は大学の授業で破産法を選択していなかったのです。

管財事件とは、裁判所によって選任された破産管財人(弁護士)が破産者の財産を調査・管理・換価処分し、それによって得た金銭を各債権者に弁済または配当する、自己破産手続の原則形態のこと。

破産事件は大きく2つ、管財事件と同時廃止事件(「同廃(どうはい)」と略します。)に分けられます。負債総額や破産に至った経緯など諸々の要素を勘案し、どちらになるか裁判所に判断されます。

大学生の私は会社経営をしようと思ったことはなく、ましてや火の車になった会社の行く末がどうなるのか、気にしたことはありませんでした。 そりゃあ皆が皆夜逃げしたら、世の中大変なことになってしまいますよね笑。誰かがお片付けしないと!
法律関係者にとっては常識の「破産管財」という業務分野。私は採用が決まってから慌ててお勉強を始めました。
(今大学生の皆さんはぜひ破産法の授業取ってくださいね。良い社会勉強になると思います。)

破産管財人は弁護士なら誰でもできるわけではありません。
破産申立件数や弁護士会の研修等を受けたか等の決められた要件を満たした弁護士が名簿に登録します。そのリストから裁判所が事件ごと管財人候補者を決めて打診し、弁護士がお受けすると選任が決まります。

今回は、ボスに破産管財人が回ってきた時に、パラリーガルとして関われる業務についてご紹介します。
どこまで任せてもらえるかは、信頼度とボスの仕事の進め方スタンスによるというところでしょうか。
破産管財は、弁護士ならではの公共性のあるお仕事。とても奥深くて、サポートのやりがいを感じられる分野だと思います。

<パラリーガルでも出来るお仕事リスト@東京本庁案件>

  • 開始決定関係の書類の受領
    担当部のキャビネットから書類をもらって来ます。

  • 大型管財のみ:申立書記載の債権者へ開始決定関係書類を発送(裁判所封筒・普通郵便)
    裁判所から指示があった場合は、送付書類一式に注意書が入っているので内容を良く確認しましょう。
    受け取った宛名ラベルは封筒に貼る前にコピーを取っておくのがベターです。

  • 管財人口座の開設、解約
    事件ごと、裁判所へ届出済みの支店で管財人口座を開設します。もちろん事件が終了したら解約します。(手続きの詳細は別記事に...)
    口座開設できたら、引継予納金を振り込んでもらうため、申立代理人へ口座開設の連絡をし、振込依頼を行います。

  • 破産者宛郵便物の管理
    破産者の郵便物が転送されてくるので、管理します。中には急ぎでご本人へ渡す必要があるものも。早めにボスに確認しましょう。
    破産者本人が郵便物を取りに来る場合もあれば、送ってあげる場合もあります。その場合は着払い(宅急便orゆうパック)で送るケースが多いです。
    なお、もしも破産者宛に郵便物を送ることがあったら、当然ですが普通郵便で差し出すと管財人事務所へ戻ってきてしまうので、必ず「管財人発送」にします。
    (分かっていても、うっかり出してしまうので気をつけましょう笑)

  • 新たに知れたる債権者へ開始決定書類発送(事務所封筒・普通郵便)
    申立書には記載されていないけど、郵便物や問合せ電話から債権者が新たに見つかった場合、開始決定関係の書類を送付し、債権届出書を提出してもらう必要があります。ボスから指示を受け発送したら、送付先住所・氏名、発送日を「新たに知れたる債権者一覧表」に入力していきます。

  • 債権届出書の受付、管理、入力
    債権者から届いた「債権届出書」を受付処理し、印鑑があるか・委任状や根拠書類はついているか・確認が必要そうな点はないかをチェックし付箋を付けておきます。届いた日付を忘れずに記入しておきます。この書類は最終的には裁判所へ提出するので、ファイリングしておき、「債権認否一覧表」へ届出金額等を入力していきます。担当者の氏名や連絡先など、後で必要になるかもしれない情報は念のため控えておきます。
    債権者によっては、受付印を押した控えを返送して欲しいと返信用封筒を同封している場合があるので、対応します。

  • 定期的に裁判所のキャビネットを確認
    債権届出書が裁判所へ送られてくることもあるので、裁判所へ行った時には必ず担当部のキャビネットを確認するようにしましょう。 1週間以上取りに行かないと書記官から催促の電話がかかってきます。

  • 法人の場合:銀行口座解約
    ボスの指示で破産会社名義の銀行口座を破産管財人として解約手続きします。郵送でできるケースもありますが、委任状持って窓口に行ったほうが早いです。必ず事前に金融機関へ連絡を入れましょう。信金の場合は特に注意が必要です。(詳細は別記事に...)

  • 法人の場合:行政への届出手続き
    従業員の住民税特別徴収の異動届、年金事務所へ異動・廃止届出、源泉所得税の申告など、行政への手続きが必要な場合があります。事前に申立代理人が済ませていたり、該当人数が多いと元従業員の方を雇ったりするケースもありますが、管財人側でサクッとやってしまうことが多いです。手続き自体はそんなに難しくないです。

  • 訴訟係属中の場合:中断の手続き
    担当部へ破産手続開始があったことを伝え、訴訟中断の上申書、破産手続開始決定(写)、管財人資格証明書を提出します。

  • 債権回収のお手伝い
    供託金がある場合、保全事件の取り下げや供託金の取戻手続きをする必要があります。ボスの指示により手続きの下調べや申立書の起案を行います。

  • 債権者集会の準備、後日対応
    債権者集会で配布する書類の準備をします。債権者が何人来るかはわかりませんが、財産目録などの準備をしてボスに渡します。(注目度の高くない事件では、期日に来る債権者は多くないようです。)
    当日来ない債権者について、資料だけ欲しいと言った内容や現状確認の問い合わせの電話が事務所に来ますので、ボスに許可をもらった範囲で回答したり、配布資料を送ったりします(FAXまたは返信用封筒依頼)。

  • 配当許可がでた場合:(簡易)配当に係る通知の発送(特定記録郵便)、振込口座指定届の管理
    財団規模によって配当に係る手続きやスケジュールが変わります。ボスとしっかり共有し、日程を確認しましょう。
    配当通知に同封した「振込依頼書兼口座指定届」が債権者から返送されてきたらファイリングします。債権届出書と同じ印鑑か・権利関係が変動していないかなどの確認をしていきます。こちらは裁判所に提出しません。
    また財団債権についてはなるべく納付書を送ってもらえるよう手配します。

  • 裁判所へ報告書をFAXで送信
    配当に係る通知を発送したら、「異議申立期間の算定起算日に係る報告書」をなるべくその日に担当部へFAXします。これは絶対に忘れてはいけません!

  • 異議がなく配当額が確定した場合:配当手続 (納付、振込、切手郵送)
    たいてい管財人口座にはキャッシュカードを作成していないと思うので、配当にあたり、振込依頼書を記入する必要があります。手書きです。そしてとにかく口座名が長い!振込件数多いと腱鞘炎になりそうです。早めに準備しておきましょう。
    配当額が少額(1000円未満)の場合、郵便切手を送付する方法で配当することができます。ボスの判断に従い、郵送する準備をします。

  • 裁判所へ終結確定証明の申請、希望債権者へ写しをFAX
    債権者側の経理処理等の都合上、管財事件の終結がわかる書類を送って欲しいと依頼されることが間々あります。計算終了集会が終わると終結確定証明を発行してもらえるようになるので、証明書を作って持って行き、担当部で書記官に証明してもらいます。管財人は申請書と収入印紙なしで発行してもらえます。
    証明書の送付を希望する旨の連絡があった場合、必ず当該事件の債権者か確認した上、FAXします。郵送希望の場合は返信用封筒を送ってもらいます。
    終結して1年経ってから希望の連絡があったりすることもあります。過去の管財事件については概要やどういう終わり方をしたのかなど、すぐにわかるように整理しておきましょう。

出来るお仕事はまだまだあると思いますが、ざっと思いつく業務を列挙してみました。
会社の業務内容も、規模も、破産時の状態も、申立代理人の仕事の仕方もそれぞれ違います。毎回わからないことだらけです。
(まぁそこが面白いところでもありますよね笑)
何件かやってるうちに流れや注意事項、ボスのやり方が掴めてくると思うので、その都度丁寧に進めて、学んで、経験値を上げていきましょう。パラリーガルが役に立てる場面は結構あるはず!

では、また。