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刑事事件記録の謄写ー申請先にご注意を。公判前記録

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私 「はい、Ocean!法律事務所です。」
相手 「東京地検、〇〇検事付事務官の〇〇です。〇〇弁護士が弁護人にお付きの被告人〇〇の件について、 記録の閲覧が出来るようになりましたのでそのご連絡です。」
私「かしこまりました。申し伝えます。ご連絡ありがとうございました。」

私 「ボス〜、〇〇さんの記録出来たそうです!」
ボス「じゃあ海さん謄写お願いね〜。〇〇日くらいまでで。」
私 「はーい。」

刑事事件の記録謄写は色々と注意が必要なお仕事です。誰でも見ることができるものではないため、必要書類等しっかり準備していきましょう。

 閲覧謄写する場所

刑事事件の記録は、どのタイミングで閲覧謄写するかによって、申請先が異なります。今事件がどのような状態なのか把握する必要があります。

1 第1回公判期日前 → 検察庁公判部
2 第1回公判期日後 → 弁護人が同意した証拠は裁判所(地裁担当部)、同意しなかった証拠は検察庁公判部
※ 追起訴分や新たに追加された証拠(任意開示証拠含む)については「公判前」と同じ扱いです。
ちなみに追加証拠については期日が近い場合は例外的に、検察から事務所へ写しを送付してくれるケースもあるみたいです(こちらから要求するものではないですが)。
3 控訴した場合 → 原審の記録:裁判所(高裁担当部)
4 裁判終了後 → 一審に対応する検察庁

最も多いのが公判前記録の謄写です。冒頭のケースですね。
慣れれば簡単なのですが、方法がなかなかわからず、初めのころは苦労しました。笑
というわけで、パラリーガルがセルフコピーで謄写する、具体的な方法をシェアしたいと思います。

  謄写準備

所定の用紙「証拠書類・証拠物閲覧申請書」は検察庁公判部4階(記録閲覧室)の申請窓口で入手できます。記入台のところに山積みに置いてあるので、次回以降の分を多めにもらっておくと便利です。初回は・・・その場で書くしかない。

様式第1号と第2号の2枚セットです。1件につき1セット記入する必要があります。
ちなみに!提出した申請書は公判記録に綴じられるので、恥ずかしくないように丁寧な字で書きましょう。笑

◆記入する箇所◆
手元に、弁護人選任届と起訴状を準備します。
[様式第1号]
・申請年月日欄
・罪名欄 :起訴状(の後ろの方)を確認して、詐欺、○○法違反、etc...と記入しましょう。複数ある時はすべて記入しましょう。なお、略称でも大丈夫です。
・被告人氏名欄 :旧字・異字体などもなるべく正確に書きましょう。
・起訴年月日欄 :追起訴分のみ謄写申請をする場合は、この欄を「追」起訴年月日として、追起訴の日付を記入します。
・公判期日欄 :第1回(追起訴分の場合は次回)の公判期日を記入します。公判前かどうかを確認するためです。ちなみに空欄でもわりとパスできます。
・係属裁判部欄 :該当の内容にマルをつけていきます。たいていは「地裁」の「単独」です。
・申請者欄 :受任状況に応じて国選・私選・被害者参加のどれかにマルをつけます。事務所住所と担当弁護士名と電話番号のスタンプを押し、弁護士名の下に「(代理人)事務員名」と記入します。
・押印欄 :弁護士の職印を押します。事務員の認印は不要です。
・備考欄 :基本は空欄にしますが、追起訴の場合は「○月○日追起訴分」、前回謄写した続きからの場合は「甲X号証~、乙Y号証~」などと記入して、記録閲覧室に持ってきてもらう証拠を特定します。
・検事室欄 :わかる場合(2回目以降の謄写の時など)は記入しましょう。東京では捜査担当検事と公判担当検事が違うことが多いので、初回は空欄で大丈夫です。記録の表紙の右下に書かれているので、次回以降の参考にするとよいでしょう。
なお、右ページは証拠についての意見等記入欄なので、事務員は無視して問題ありません。

[様式第2号]
・左上のチェック欄 :「弁護人等によるコピー」の四角にチェック☑(写真を撮るときは「弁護人等による撮影」の四角にチェック☑)
・罪名欄 :1枚目と同一内容
・被告人氏名 :1枚目と同一内容
・申請者名 :弁護士名をスタンプ
・押印欄 :弁護士の職印
・代行業者欄 :事務員名を記入
(~コピー終了後~)
・右ページ :「全て」など、コピーした証拠を記入します。
ちなみに、多少間違ったり空欄があっても、受付の方が修正してくれるので大丈夫です(青鉛筆で正しい内容が書かれた状態で記録に綴じられます)。

◇MEMO◇ 罪名の略称の調べ方
中には正式名称がものすっごく長い場合がありますよね。
ex.「犯罪による収益の移転防止に関する法律」違反とか、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」違反とか…etc
枠内に書ききれないし、正直だるい笑。そういう場合、略称でも大丈夫なんです。
では皆さん、法律の正式な略称の調べ方ご存知でしょうか?

ずばり、ネット検索一択です!笑
https://elaws.e-gov.go.jp/

PCから「e-GOV法令検索」で法令を検索し、該当の法令をクリックすると、たいてい画面左側のサイドバーには「目次」タブが表示されています。そこで「詳細」タブに切り替えると、「略称法令名」が載っています。 簡単ですよね!早いし正確!
※スマホからアクセスする場合は、画面右下の「目次・沿革・詳細」タブをクリックすると「目次」タブで表示されるので、「詳細」タブに切り替えましょう。

先の例は「犯収法」、「麻薬特例法」でOKです。 改正年月日や関係法令、法令名の読み仮名(ふりがな)も載っていて意外と重宝しますので、ぜひ検索してみてください。

↓ちなみに略称法令名一覧ページもありました。
https://elaws.e-gov.go.jp/abb/

続いて委任状を作成します。
書式は任意です。委任事項は「下記事件の閲覧謄写にかかる一切の件」として、事件の表示(裁判所、事件番号、事件名、被告人名)を記入する簡単なもので大丈夫です。追起訴分の謄写のときは、追起訴の事件番号と事件名を忘れずに。

【ボスに確認しておく事項】
・コピーする範囲: すべてコピーしてよいのか、特定のものだけでよいのか?
・コピーの方法: カラーで印刷されているページがあった場合、すべてカラーで必要か、重要そうな部分だけでよいのか?
・日程: 職印の持ち出しが必要だが、謄写に行く日程は支障ないか?(混み具合と記録の量にもよりますが、コピー機は2台しかないので、運が悪いと2・3時間かかることも…)
・委任状: 作成した委任状に問題がないか。

◆当日の持ち物◆
・「証拠書類・証拠物閲覧申請書」
・弁護人選任届 原本
・委任状
・職印
・弁護士会発行の従業員証明書(または運転免許証)
・千円札 5枚くらいあれば十分です。
両替は隣の部屋の司法協会でしてもらえますが、その間にコピー機の順番を逃すと痛手です。笑
・指サック的なもの あると便利です。

 謄写方法

公判前記録を謄写できる記録閲覧室は地検公判部の入ってる建物です。
簡易裁判所・家庭裁判所がの隣(日比谷公園を背にしてひとつ右)の建物の4階に記録閲覧室と東京謄写センターがあります。

位置関係は日比谷公園を背に左から、弁護士会館、家庭裁判所の入口、検察庁公判部(公正取引委員会)の入口、検察庁(メイン)の入口、法務省の入口です。
検察は部署の場所を詳しく公開してないから戸惑いますよね…中に入る機会があったとき、エレベーターの階表示を見ると楽しいですよ。

検察庁と法務省は低めの門の前に守衛さんが立っているので、身分証を見せながら用件を伝えます。
法律事務職員身分証明書のカードがベストですが、運転免許証でも大丈夫です。

私「こんにちは。法律事務所の事務員なんですが、公判前記録の閲覧謄写に来ました〜。」
警備員 トランシーバーで連絡後「どうぞお入りください」
※入口間違えてたら教えてくれるので、わからなかったら適当に突撃して大丈夫です。

入口で検温して、ゲートを通過し、受付で入館票を記入します。なお事務員の身分証明書を持っていない方は、ゲート通過前に持ち物チェックもあります。

入館票は事務所住所、事務所名、事務員名を記入し、「用件」の該当箇所にマルをつけます。セルフコピーの場合は「閲覧」にマル、東京謄写センターへ依頼する場合は「謄写」にマルです。

申請受付時間(閲覧)
午前 9:30~11:30
午後 1:00~ 3:30
ちなみに上記時間内に受付さえすれば、セルフコピーは17:00までに終わらせば大丈夫です。基本的に途中退出はできないのでご注意ください。

警備員 「ではN階ですね。終わったら入館票の右下にサインをもらって、帰りにご返却ください。」
私 「承知しました~。」

エレベーターでN階へ行き、記録閲覧室へ入ります。 手の空いてそうな職員の方に声をかけ、申請書類一式と身分証明書、入館票を提出します。その場でチェックしてくれるので少々待機し、問題なければ弁護人選任届と身分証明書、サイン済みの入館票を返却されます。
空いている席に座り、記録が届くのを待ちます。たいてい5分もしないで、職員の方に呼ばれます。
職員 「○○弁護士(○○さん)、職印をお持ちになってください」
提示されたリストに押印し、記録を受け取ります。

そのままコピー機へ直行し、ひたすらコピーします。
※コピー機が使用中で埋まっているときは、即座に待機してそうな人が何人居るか、周りを確認します。 (暗黙の了解なのか、不思議なことに誰も並びません笑。コピー機を使いたそうにしている人を把握し、順番を待ちます。)

!!注意!!
・黒い紐は外してはいけない
・白い紙紐は外してよい
・コピー機の設定を確認し、色を白黒、用紙サイズをA4固定する
・スマホ(ネットにつながっている機器)で記録を撮影してはいけない
・記録は検察官?がそのまま使用するので、コピーの際は雑に扱わない
・コピー機の紙がなくなったら、用紙選択から下のトレーを選択する(そこも空なら職員に声をかける)

なおセルフコピーのつもりだったけど、あまりにたくさんの記録が出てきちゃった時は、途中から東京謄写センターへ依頼する形に変更することもできます。

裁判員裁判の事件など「こんな量、時間内にコピーしきれないよ!」という時は、荷物や記録はそのままいったん退室して、廊下で事務所へ連絡入れ、東京謄写センターへ依頼してよいか確認しましょう。記録閲覧室は電話使用不可です。

東京謄写センターへ依頼すると謄写1枚あたりの値段が高くなるので、それなりの金額になってしまうこともあります。
ちなみに国選の場合、合計で200枚以上謄写した場合、事件終了報告時に請求すれば必要経費として償還されます。が、それ以下だとボスの持ち出しになる可能性が高いです。

依頼する場合は弁護士から東京謄写センターへの謄写委任(パラは使者)という形になるので、弁護士から事務員への委任状なしで、その場で申請書のみ書けば申請できます。
セルフコピーの場合と申請書の様式が違うので、新たに申請用紙を記入する必要があります。

ちなみに謄写記録に記録媒体(DVDやBlu-ray)が含まれている場合も、その場で録音等はできないので、東京謄写センターに依頼することになります。

東京謄写センターへの申請・受け取り受付時間
午前 9:30~12:00
午後 1:00~ 5:00
申請はセルフコピーと同じ部屋(記録閲覧室)、受取りは隣の部屋(東京謄写センター)です。

コピーがすべて終了したら、席に戻り枚数をチェックします。
おつりを出す際、領収書ボタンを忘れずに。
申請書の様式2の右ページに謄写した範囲を記載したか確認します。
問題なければ、外した白い紙紐をつけなおし、職員の方に返却します。
そのまま1階へもどり、入館票を返却し、退館します。

裁判所で謄写するケース

控訴事件の国選が配点された場合だと、弁護士はまず原審の記録を確認しようとします。
原審の弁護人の先生からもらえれば御の字ですが、刑事事件の公判記録等は事件終了速やかに破棄することが求められるので、もらえないケースも間々あります。閲覧だけでそもそも謄写しない先生や、必要な箇所のみピンポイントでコピーする先生もいらっしゃるようです。
そうなると、裁判所で謄写することになります。

高裁の担当部で原審の記録を謄写したい旨を伝え、刑事記録謄写室でセルフコピーします。

!!注意!!
弁護人選任届、弁護士から事務員への委任状、職印が必要です。

民事事件の謄写手続きでは、弁護士が当事者代理人だと委任状が不要なので、間違えやすいです。他の手続方法あまり変わりありません。事前に担当部の書記官に話を通しておくとスムーズですね。

検察庁の記録謄写は、はじめの頃はかなり緊張しました。
そもそも検察庁なんて入ったことないし、入口で守衛さんが待ち構えてるし、門の隙間も狭いし。心理的ハードルが高かったです・・・。
手続き方法をしっかり確認して、心の平穏を保ってください。慣れれば大丈夫!

悩めるパラ初心者の方々のお役に立てればうれしいです。ではまた。