ボス 「この土地の抵当権、クライアント曰く放置された登記みたい。売却時に消しておきたいとのことなので、抵当権抹消登記請求訴訟を起こすつもりです。相続人調査しておいてください。関係図と当事者目録もよろしく。できる限り急ぎで。」
私 「かしこまりました。(・・・相続人調査キター!個人的に好きなお仕事。今回はどのくらい広がることやら・・・楽しみすぎる!)」
相続人調査の業務量は、正直やってみないことにはわかりません。市区町村を超える転籍を多くしていたり、養子縁組や婚姻・離婚を複数回していたりなどすると戸籍の数が多くなり、単純に人数だけでは計り知れません。
戸籍1通450円、除籍・原戸籍1通750円。それに郵送代と小為替の手数料。
住所まで調べるときは戸籍の附票1件200円~450円(市区町村による)。
郵送請求には3日~2週間ちょっとかかります。
相続人(相続分を主張できる人)が数人ですぐに終わり2万円程度で済むケースもありますが、多いときは数十万円もの実費がかかることも・・・驚きです。
かなり手間暇かかるお仕事です。相続人の判断を間違えると後々大損害につながる恐れがあるので、迷った時はその都度ボスに確認しましょう。
☆POINT☆
昔の人の相続人調査は、お亡くなりになった日に注目する。
相続開始の時によって法定相続人も、相続分も変わってきます。
それぞれの相続について相続人(相続分を主張できる人)は誰なのかを確認し、その相続が代襲相続なのか、数次相続なのかをしっかり区別することが大切です。
また裁判や登記をする場合は「出生から死亡までの戸籍が必要なのは誰か」もしっかりと把握しておきたいですね。 (数次相続人より後に亡くなっている配偶者がいた場合、その配偶者について出生から婚姻までの戸籍を落としがちになるので注意が必要です。もしかすると、他に子どもがいる可能性も・・・。)
相続開始:明治31年7月16日~昭和22年5月2日
[明治民法]
※家督相続か遺産相続かによって異なる。
家督相続・・・戸主たる身分的地位と戸主に属する財産の受継。一般的には嫡出男子の年長者が単独相続する。 相続原因は死亡相続のほか、戸主の隠居、女戸主の入夫婚姻その他がある。
遺産相続・・・戸主以外の者の相続。 (昔は、ほぼすべての家の財産を家督相続人が管理・承継していたため、該当するケースはあまりない。)
※昭和22年5月2日まで(明治民法時)に家督相続が開始し、家督相続人を選定すべきであったが、選定しないうちに応急措置法が施行され、現民法が施行された場合
➝現民法旧相続分が適用される。ただし、昭和22年12月31日までに選定されていた場合、明治民法が適用され家督相続となる。
<相続放棄の場合の登記の取り扱い>
・昭和22年7月1日以降に相続放棄をした者
➝相続開始の時期にかかわらず、「初めから相続人とならなかったもの」として取り扱う。
・改正法施行前に相続放棄をした者
➝他の相続人全員に、その相続分に応じて帰属する。[昭和37.6.15民甲第1696号通達]
相続開始:昭和22年5月3日~昭和22年12月31日
[日本国憲法施行による応急措置法]
相続開始:昭和23年1月1日~昭和55年12月31日
[現民法旧相続分]
相続開始:昭和56年1月1日~現在
[現民法]
あまりにも膨れ上がった相続分を主張できる人の数をみると、登記を放置しちゃいけいなと心から思います。100人近く相手に訴訟とか、正直勘弁してほしい。事件が終わるまでに何人か亡くなってしまうのではとヒヤヒヤ。
放置された登記を効率よく抹消する方法、お偉いさま方がどうにか良い制度を作ってくれないかなぁと思う今日この頃です。
では、また。
▷参考資料◁
所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会(国交省設置)[報道資料]
https://www.mlit.go.jp/common/001178824.pdf
(記載HPリンク切れのため、下記ガイドラインのアドレスから飛んでください)